都心にありながら、一歩足を踏み入れるとそこは静寂と歴史に包まれた別世界。普段は見ることのできない“夜間特別開園”「秋の夜長の小石川後楽園2025」が2025年10月10日(金)~10月20日(月)まで開催されます。歴史ある大名庭園を舞台に、最新技術と伝統芸能が融合した幻想的な秋の夜の魅力をご紹介します。

都心にありながら、一歩足を踏み入れるとそこは静寂と歴史に包まれた別世界。普段は見ることのできない“夜間特別開園”「秋の夜長の小石川後楽園2025」が2025年10月10日(金)~10月20日(月)まで開催されます。歴史ある大名庭園を舞台に、最新技術と伝統芸能が融合した幻想的な秋の夜の魅力をご紹介します。
水戸徳川家の上屋敷内にあった庭園。2代目藩主徳川光圀が「天下の憂いに先だって憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」という意味から命名。木々がうっそうと繁り、都心にいながら自然に抱かれた気分が味わえる。秋のモミジが色づいたさまは、これまた格別。広い庭園内では紅葉絵巻が繰り広げられ風情豊かだ。
見頃:11月下旬~12月上旬
場所:東京都文京区後楽1-6-6
アクセス:地下鉄飯田橋駅から徒歩3分(西門)、JR総武線水道橋駅から徒歩5分(東門)
“秋の夜長の小石川後楽園”の入口は後楽園の西門から。まず目にするのは庭園の中心「大泉水」とほとりにそびえる「一つ松」です。東京ドームや文京シビックセンターを背景に、ライトアップされた自然あふれる風景をお楽しみいただけます。
庭園は1629年に水戸徳川家初代藩主・徳川頼房公が作庭を始め、二代藩主の徳川光圀公(水戸黄門)が完成させました(現存する大名庭園としては最古!)。そして「大泉水」は琵琶湖を模しており、ほとりの一つ松は琵琶湖畔の「唐崎の松」を模したものです。頼房公と親密だった三代将軍・家光公が、この松の下で池の意匠に助言したという逸話も残っており、歴史の息吹が感じられます。
次に訪れるのは、光圀公が明から招いた儒学者・朱舜水設計と伝わる石造りのアーチ橋「円月橋」です。350年以上前の高度な技術で造られ、後の八代将軍・徳川吉宗公が江戸城の吹上の御庭に同じものを作ろうとしても、ついに完成させることができなかったとか。
ライトアップされた橋が水面に影を落とすと見事な満月を描き出します。光圀公は、先代が築いた庭園の「一木一石たりとも動かさず」という思いを尊重し、こうした中国風の建造物を「潤色(じゅんしょく)」、つまり彩りを添える形で完成させたといいます。
中国の神仙思想に基づいて“不老長寿の仙人が住む”とされる「蓬莱島」を鑑賞。赤い祠には水の神である弁財天が祀られています。剪定が行われたばかりで、祠が見やすいとのことです。そばに立つ「異形灯籠(いけいどうろう)」は、かつて舟遊びの際に帰路を照らす灯台の役割を果たしていたとも言われています。
“秋の夜長の小石川後楽園”では期間中毎日「江戸城下の宴」と題して伝統芸能公演が行われます。その中でも取材日本日は「大江戸玉すだれ」の公演が披露されました。「あ、さて!さて!さては大江戸玉すだれ~♪」このお囃子にピンと来る方はいらっしゃいますでしょうか。江戸時代の子供の遊び道具を起源とする芸で、唄と囃子に合わせ、一本のすだれが鯱(しゃちほこ)や橋へと次々に形を変える妙技は必見です。
そしてイベントの目玉は、庭園とお屋敷を隔てていた「唐門」をスクリーンにしたプロジェクションマッピングです。戦災で焼失後2020年に復元されたこの門は、かつて高貴な身分の者しか通れなかった特別な場所。そんな唐門で行われるプロジェクションマッピングは水戸藩時代の江戸の暮らしや風景を写し取った泥絵や浮世絵の世界を映し出します。例えば唐門から飛び立った折り鶴が、色鮮やかな世界を旅するような───浮世絵の物語が壮大な音楽と共に映し出され、江戸時代に思いを馳せるような特別な体験を楽しめます。
唐門へ続く道は「築地塀」の小径。ここでは後楽園ゆかりの家紋が影絵で地面を彩る「影絵の小径」や、小石川後楽園の四季や文京区の名所を紹介するスライドショーなどがあり、現代はもちろん、過去や未来の文京の姿を垣間見ることができます。
“秋の夜長の小石川後楽園”は参加して楽しめる企画も魅力的。株式会社ロッテとの協力で実現したのが「小梅ちゃん」のスタンプラリーです。梅味のキャンディで知られる小梅ちゃんは実は東京の小石川出身。可愛らしい重ね押しスタンプラリー企画で、完成させると夜の小石川後楽園の風景と小梅ちゃんが浮かび上がります。
会場では風情ある赤や黄色の紙提灯が販売されており、これを持って散策することで一層の雰囲気を味わうことができます。柔らかな光が足元を照らし、幻想的な夜の散策を優しく演出していました。お土産も充実しており、和の小物販売や水戸光圀公にゆかりのある茨城の物産品など様々。
「秋の夜長の小石川後楽園2025」は、庭園の持つ歴史的価値を基盤としながら、現代的なエンターテインメントを見事に融合させたイベントでした。美しい庭園を掘り下げれば歴史的背景を学び、江戸と現代を結ぶ光の演出と遊び心あふれる企画が新たな魅力を引き出しています。過去と現在が光の中で優しく交差する魔法のような一夜。この秋、歴史と光が織りなす江戸の夢物語を体験しに、足を運んでみてはいかがでしょうか。
公式サイト
https://www.tokyo-park.or.jp/special/koishikawa_lightingup/index.html